イベントレポート

vol.142

第3回 ONSEN・ガストロノミーウォーキング in 薩摩國・市比野温泉を開催しました。

鹿児島県

市比野温泉はおよそ400年前第二代薩摩藩主島津光久公が「天下の名泉」と讃えた美人の湯。その市比野温泉を舞台に「365日まち歩きが楽しい」をスローガンとしたガストロノミーウォーキングが開催です。周辺の田舎の風景、町中の侘びさび、変わりつつある町並みを感じれるような、いつでも歩けるウォーキングコースを目指し、歴史と人、そして薩摩の焼酎を落とし込んで、市比野温泉ならではの出会いと温かさを感じる春の1日をお届けします。

開催日時  2023年3月18日(土) 10:00 ~15:00
開催場所  薩摩川内市樋脇町 市比野温泉周辺 全長7キロ
天候    晴れ
参加人数   87名(予約ベース)
参加費      大人子供同額:4,000円
主催    ONSEN・ガストロノミーウォーキング in 薩摩國・市比野温泉実行委員会


スタート:道の駅「樋脇」遊湯館

前日の夜、結構な雨と風に見舞われたのですが、写真のとおり当日は晴れ、ONガス日和となりました。ONガスは雨天決行でも開催するイベントで、雨には雨の、曇りには曇りと、天候によって異なる景色が見られるのも、本来のその土地の姿を知ることができますが、やはり「晴れ」だと嬉しいですね。

スタート地点となるのは「道の駅「樋脇」遊湯館」市比野温泉(樋脇町)の象徴である丸山に呼応するような双子の大屋根が特徴的で、無料の足湯も併設し、市比野温泉の観光拠点となってます。スタートを記す「横断幕」が駐車場にかけられ、開放的な景色の前で思い思いの写真を撮られる参加者達。これから歩く7キロを前に、皆さんの楽しげな様子が写真からも伝わります。




道の駅に併設された「足湯」ではスタート前のひと時を寛ぐ参加者の姿もありました。また、源泉掛け流しの無料のお湯汲み所もあり、家に持ち帰りお料理に使われる方も多いそうです。


いざ出発

時差スタートの為、大々的な「開会式」といったものは無いのですが、当日は薩摩川内市 田中良二市長の歓迎のご挨拶に続き、市比野温泉地域活性化協議会、谷口尚也会長の号令でいざ出発。市比野の田園風景を見ながら市比野温泉街へと進みます。市比野温泉のONガスは薩摩國ならではの焼酎が各拠点で楽しめるようで、この先のガストロノミーポイントを楽しみにスタートを切っていらっしゃるようでした。



市比野温泉の象徴「丸山」

ひときわ目を引く丸い山。見た目の通り「丸山」と呼ばれます。市比野だけでなく広く地元の方から親しまれている山ですが、言い伝えでは「ふとどん」という妖精が大きなお椀で土を取った跡が現蘭牟田池、土を置いた所がこの「丸山」と云われてます。スタート地点で配られた地元のお菓子、福寿堂の「ふとどん」には妖精をイメージした絵柄が描かれていましたね。なんとも可愛らしい妖精です。


ウォーキング途中、大きく成長した椿の横に史跡「市比野駅の跡」を示す看板がありました。この町に歴史あり!この後、市比野の町を見下ろす里山へと登り坂にはなりますが、森林浴を楽しみながらのウォーキングは気持ちの良いもんですね。


第1ガストロノミーポイント:GAYA

市比野温泉でのONガスの特徴として「ガストロノミーポイント」に既存の飲食施設をうまく利用し、コースが設定されております。最初のガストロノミーポイントは「居酒屋ダイニングGAYA」。ここでは「千切り野菜の豚しゃぶ」が振る舞われました。味付けも優しく、千切りの野菜がお蕎麦のような感じで、いくらでも食べれそう。お酒は「田苑酒造」の焼酎。希望の方にはビールも提供され、スタート早々、乾杯です!

<提供された焼酎>① 田苑酒造:芋 ②祁答院蒸溜所:青潮 ③塩田酒造:六代目百合 ④吉永酒造:甑州 ⑤吉永酒造・五郎





第2ガストロノミーポイント:八幡神社(4区公民館)

ほどなく歩くと、第2ガストロノミーポイントとなる4区公民館の登場です。公民館は八幡神社と同じ敷地に建てられ、緊急時の避難所にもなっている建物ですが、この八幡神社、水害をなくす為に置かれた神社だそうですよ。今も昔も「災害」に対峙する心強い大事な存在ですね。ちなみに八幡神社の社内には河童を踏みつけ、悪さをしないよう押さえつける仁王様がご神体として祀られているそうです。

この場所でのガストロノミーメニューは「ごて焼」、しっかりと味が染みこんだローストチキンで、この地では「ごて焼き」という方言で呼ばれます。また写真のとおりのボリューミーなサイズでの提供で早くもお腹いっぱいになりそうな予感がします。


<提供された焼酎>ここでは「田苑酒造」芋焼酎の飲み比べ。①田苑 ②田苑黒 ③田苑瑠璃 のほか、琥珀色の焼酎 ④エンヴェレシーダが提供。このエンヴェレシーダですが、原料の特性とオーク樽に由来する甘さと香が印象的で、洋酒のような、はじめての味でした。また田苑酒造は焼酎造りの工程でクラッシック音楽を聞かせることでも有名ですね。興味のある方は田苑酒造のホームページもチェックしてみてくださいね。



いよいよコースも中盤といったところでしょうか、田んぼを囲む里山を眺めながら日本の原風景を歩きます。途中、後醍天皇の弟のお墓があったり、ところどころに田の神さぁ(たのかんさぁ)と呼ばれるお地蔵様などの姿を目にします。普段、車では見過ごしがちな景色ですが、歩く目線だから気づくことができる個性豊かな神様たち。古くから根付くその土地の暮らしや信仰に触れたような気がします。



第3ガストロノミーポイント:入栄

里山中心だったウォーキングコースも、後半に突入。市比野の温泉街に入りますが、その入り口ともいえる場所の地元で愛される老舗の和食店「入栄」が3番目のガストロノミーポイントです。メニューはというと郷土料理の「中皿(つざら)」を提供。鶏を出汁に根野菜をしっかり煮込んだ縁起物料理です。甘く染みこんだお料理はお酒にも合いますね。大樹の木陰に設営された野外の食事エリアは、春の風が心地よく、ついつい長居したくなる場所で会話も弾みます。

<提供された焼酎> 山元酒造の ①蔵の神 ②蔵の神黒 ③五代 そしてベーススピリッツは、日本の国酒「本格焼酎」から生まれたお酒(ジン)。④GURAPPAが楽しめました。GURAPPAは梅のエキスと炭酸で割ると、とても飲みやすく、酔いが早く回りそうです。




石倉・温泉街・裏通り

町に入ると、市比野温泉の歴史や、そこに住む方の生活を感じる建物や場所が現れます。重厚なレンガ造りの「石倉」が目を引きますが、この「石倉」、古くはタバコの葉の保管庫として使われていたとの記録があるそうです。しかしながら誰に聞いても「米倉じゃ!」と。どちらが正しいのか解りませんが、こんな感じもご愛敬ですね。


第4ガストロノミーポイント:ダイニング遊

温泉街の中でのガストロノミーポイントは地元の精肉店が営む焼き肉店「ダイニング遊」。普段はメニューとして提供している人気の「牛丼」をONガス用にミニサイズで提供です。とはいえ、結構なボリューム。甘辛いタレで作られた特製牛丼。うまい!!

<提供された焼酎> オガタマ酒造 ①鉄幹 ②鉄幹黒 ③永利(ながとし)



市比野でのガストロノミーウォーキングですが、多くの地元の方のボランティアで運営されています。当日もオレンジのジャンバーを着たスタッフの方が、ウォーキングルートの誘導やガストロポイントでの食事提供など、フル回転で頑張ってくれたのですが、そのスタッフは皆、市比野温泉をこよなく愛する地元の皆さん。普段は酒屋さんだったり、クリーニング屋さんだったり、御菓子屋さんにレストランや食事処を営む方と様々。数日前の準備から当日と、「おもてなし」に感謝です。


第5ガストロノミーポイント:足湯

なんと「足湯」が第5ガストロポイントに。 少し熱めのお湯に足を浸すと不思議と疲れが吹っ飛びますね。そして、お楽しみのガストロメニューですが、このポイントではお酒はお休み。デザートとして「みそプリン」が提供されました。この時間帯のデザートはちょっと嬉しいですね。この「みそプリン」市比野の地で明治38年に創業の「マルニ味噌醤油店」が作ったプリン。味噌とプリン?って結びつきませんが、なかなか良い感じに仕上がってます。マルニ味噌醤油店は本業の味噌や醤油のほかにも、人気で行列のできるラーメン店を展開していたりと、古くから受け継がれた「味噌」をベースに、魅力的な商品で多くの方を楽しませてくれます。



温泉街

江戸時代から大衆のための湯治場として栄えた市比野温泉ですが、なんと言っても「美人の湯」と言われる泉質の良さは自慢です。明治の女流歌人、与謝野晶子も訪れ、町の中心に位置する「みどり屋旅館」に宿泊されたそうですよ。前回はガストロノミーポイントにもなっていた「みどり屋旅館」ですが、今回は外観を楽しみます。当時の佇まいを今に残し、趣がありますね。


ゴール直前。ちょっと嬉しいサプライズのお土産です。市比野温泉街にて大正4年創業の「弁天堂」のお煎餅が道行く参加者に手渡されました。「街に訪れた人々に美味しいお菓子を届けたい」という店主の思いで作られたお煎餅。歩きながら食べる方、ウォーキング終了後に帰路の途中で食べる方と様々ですが、皆さん、市比野の思いが詰まった弁天堂の味を楽しめたのではないでしょうか?


第6ガストロノミーポイント:道の駅 そしてゴール

スタート地点でもある「道の駅「樋脇」遊湯館」に到着。食事が充実の市比野温泉のONガスですが、ゴール地点はもちろん最後のガストロノミーポイントにもなってます。薩摩といえば外せない「さつま揚げ」が最後を飾るメニューとして登場。鹿児島では「つけ揚げ」と呼ばれ、さすが本場の「つけ揚げ」はとても美味しいですね。また、一緒に「がね」も提供されました。見た目は「かき揚げ」とよく似ていますが、さつまいもを食材とした郷土料理。さつまいもの甘い風味とほくほくの食感が癖になりそうな美味しさです。

<提供された焼酎>最後の焼酎は ①村尾酒造・薩摩茶屋

当日は薩摩川内市の酒造が作る代表的な焼酎がこれでもか、これでもかと振る舞われ、ゴール地点ではほろ酔い気分で賑やかな青空宴席に早変わり。山口から来た方と鹿児島県の方が仲良く話すグループは、薩長同盟以来の盟友と盛り上がっておりました。見ず知らずの方とONガスを通じて交流を深めるというのもONガスの醍醐味ですね。





参加された方のお声

最後に参加者の方から寄せられた声を紹介させていただきます。

「食べ物が美味しく、焼酎と合っていたので町の方々も親切で食べ物も予想以上に美味しく満足でした。」「すれ違う町の人がとても感じよく挨拶してくれました。市比野の方がいつもニコニコ、朗らかに接してくれるので、こちらまで楽しくなります。」「焼酎の種類の多さにどれを飲んだらいいか迷いました。」「薩摩川内は海の方面しか行った事はないですがこんなに素敵な所があると知ってよかったです。来年も開催して下さい!スタッフの皆様ありがとうございました。」

ガストロノミーとは「その土地の歴史や文化、習慣に育まれた食やお酒を通じて、その土地の魅力を知る」というもの。まさに薩摩國のガストロノミーウォーキング。市比野の魅力を堪能する1日となりました。

参加者の皆様、関係者の皆様、おつかれさまでした。